2024年5月9日 五番勝負 第2局 福間香奈女流王位 対 加藤桃子女流四段|第35期女流王位戦


情報源: 2024年5月9日 五番勝負 第2局 福間香奈女流王位 対 加藤桃子女流四段|第35期女流王位戦

北海道の一部の地域では、GWに桜が満開だったそうです。対局場所の札幌はさすがにそこまで遅くはありませんでしたが、日本という国の南北の長さを改めて思いました。女流王位戦は徳島⇒北海道⇒福岡⇒兵庫と、国内を大移動する棋戦ですが、そういう地域ごとの季節のうつろいを実感しやすいのが魅力の一つです。

さて対局の方は後手が向かい飛車、角道を止めるクラシックなタイプで持ち時間の長い女流王位戦ならではの持久戦ですね。序盤に9筋を突き合ったのは明らかに穴熊の牽制です。23手目、先手がまずは軽く5筋でジャブを当てましたが、さらに3筋にも連打し、4六銀で主導権を握りに行きました。29手目、どちらの歩を取るか悩ましいところですが、2分で5筋を選んだところを見ると、自信ありといったところでしょうか。その直後に、後手が1時間近い長考をしたことでもそれは伺えます。

そして先手は比較的薄い中央に飛車を転回し、5五銀に援軍を送りました。手持ちの歩が1枚しかないので、5三歩を打たれた後に攻めを継続するのは難しそうですが、何か秘策があるのでしょうか? 休憩明けの一手に注目です。

再開後の一手は5六飛、浮いたからには横にも使いたいという意図であり、3七桂と跳ねた時の3六歩を先受けという意味もありますね。後手は角を引いて飛車筋を通し、その3筋から逆襲開始。しかし先手の攻めはそれを無視するかのごとく、4筋と9筋からの両面攻撃です。2二角が浮き駒なので後手は意外と受けづらいです。

手数をかけた銀の顔が立ち、先手好調のようですが、後手も懸案だった角が捌けそうで油断はなりません。先手の狙いはあくまでも4&9筋の両面攻撃で長考の末、最後の一歩を使って9三歩。以下、角交換から龍を作って狙いの1六角が実現、遠く6一の金も睨んでおり、この対処はとても重要です。選択した4六龍、そして5六金に対する4四角、今度は先手が対処に悩ましい局面です。

9四歩は見事な切り返しでした。その後は大捌きで先手が上手く立ち回った印象ですが、後手も2八飛以下ラッシュをかけ、8八金ときわどい王手で迫ります。ここまでノータイムの直線的な応酬が続いていましたが、ここで先手の指し手が止まります。読み抜けでしょうか、同玉の一手しかないのですが・・・。

反省タイムも含め30分近く使った後、4六角で延命を図りますが、5五歩が好手で完全に痺れました。4三角成と最後の一暴れに打って出ましたが、8五桂、そして9六桂の連打から一気に寄せられてしまいました。遡ると69手目の4一飛がどうだったか、と思います。桂を取りながら龍を作れますが、4二銀&5一金の形を作らせてしまい、せっかくの龍が封殺されてしまいましたから。どこかで歩を手に入れて4三歩を打つ、そんな構想だったのかもしれませんが、その機会を与えなかった後手が見事でしたね。